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夜のオーラ;NOCTAURA [絵画制作と絵画論]

 知人が数日後に結婚式を挙げるという.結婚式の翌日は誕生日
が控えているのでお祝いをどうしようかということになった.最近
は実入りが少ないので小さな自作の絵でも良いかと聞いたら,
カードだけでもいいのに絵ならいいもわるいも無いとの返事である.
さっそく25cm四方のベニヤ板を買ってきて制作を開始することに
なった.期限は郵送の日時を考えると2日間,ゆっくり練っている
時間は無い.彼女の好きな色は赤である.

noctauraP1.jpg

 赤の象徴的意味でまっさきに思いつくのは興奮,怒り等と結びつく
気分の高揚である.これは価値観によって評価は低くも高くも
なる.政治的意味合いで革命や変革の旗印として使われるから
好かれもするが,立場が違えば憎悪の対象にもなるのも同じ
理由からであろう.しかし赤は同時に危険や警告の印でもある.
”寿”の字をあざやかな朱色で書くのは,危険や警告の意味も
こめてのことであろうか(まさか!).いずれにしてもこのような
平板な象徴によりかかるのは面白みが無い.ランボーの良く
知られている詩に「永遠」がある.

noctauraP2.jpg

とうとう見つかったよ.
なにがさ?永遠というもの.
没陽といっしょに,
去ってしまった海のことだ.

みつめている魂よ.
炎のなかの昼と
一物ももたぬ夜との
告白をしようではないか.

人間らしい祈願や,
ありふれた衝動で,
たちまち,われを忘れて
君は,どこかえ飛び去る・・・.

夢にも,希望などではない.
よろこびからでもない.
忍耐づよい勉学・・.
だが,天罰は,覿面だ.

ひとすじの情熱から,
繻子の熾火は,
”あっ,とうとう”とも言わずに,
燃えつきて,消えてゆくのだ.

とうとう見つかったよ.
なにがさ?永遠というもの.
没陽といっしょに,
去ってしまった海のことだ.

金子光晴訳; 角川文庫,「ランボオ詩集」より

noctaura2.jpg

真っ赤に燃えて海に融けて行く太陽は常識的な象徴ではない.
赤の色彩の補色は緑であるが,太陽の昼との対比で漆黒の
闇を加算したらどうなるのだろうか.いや,むしろ夜の
周縁にからみつく昼,昼の周縁としての夜の方が
イマジネーションが飛翔できる.夜からしみ出るものがnoctaura
で(つまり夜のオーラ),それは昼の断片を吸って生きる
noctiluca(夜光虫)だったりして・・.座標をずらせば
昼全体が夜のnoctauraという観方も可能なのだ.とすれば
単一の赤というのは完全に一つの誤解で,彩度,明度の異なる
スカーレット,カーマイン,ヴァミリオン,チェリー・レッド,ルビー,
レーキ,ピンク,・・・の巨大な集合体ということになる.

タイトルNOCTAURAはわずか一日で完成して彼女に
送り届けられたが 感想はまだ聞いていない.
「えー,なにこれ!」を言われたらどうしよう.


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