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●60年前の黙示録;少年少女SF「凍る地球」の警告(1) [太陽]

 人口問題や食料を含む資源・エネルギー危機,それに異常気象を
重ねると今日の環境問題はその射程に殆どが入ってしまうが,
文明批評を不可欠とするSFはどの程度深く,広くこの主題と取り組んで
来たのであろうか.今はSFというよりは現実そのもので,既存科学の
枠組を越えたシステム的視点が強調されるにしても,それはフィクション
の世界ではない.しかし50年,60年前となるとどうだろうか.

春雪2.jpeg
本年3月9日の大雪.この月の大雪の経験が無いわけではないが今冬の天候激変は異常

 科学・技術は生活向上,ひいては社会発展の希望の星と大部分が
前向きに受け取っていた時代である.SFの分野こそ多くの発言が
なされてしかるべき時代で有った.にもかかわらず地球環境のような
グローバルな視点のSF作品は少なかったように思う.
 と言っても60年以上前というと僕は小学3,4年生である.大人向けSF
など読める歳ではないし,また本は戦後の紙不足で限られた数しか出版
されていなかったはずだ.当時の僕等が夢中になっていた本は,少年
少女向けの月刊雑誌で,この中にはSF的な内容のものも多数有った.
その一つが「東光少年」である.この雑誌は昭和23年(1948)創刊の
冒険活劇文庫(後に少年画報と改題)より一年後れて創刊されたが,
小説中心で絵物語中心の他誌と性格を異にしていた.

春雪3.jpeg
翌朝3月10日,多量の着雪で木々の枝がいたるところで道路に散乱していた

 小学生の僕が雑誌を買ってもらえるかどうかは,その月の家の経済
状態と交渉しだいで,冒険活劇文庫だけは定期購入していたので
「凍る地球」の初登場については記憶が定かではない.ただ,太陽黒点
異常による地球環境の激変がアフリカの大砂漠を消滅させ,大豪雨
の連続で生態系が完全に崩壊,飛イナゴの大群が波濤のように欧州
各地を襲う場面が強烈な印象として残った.

3月25日松林雨1.jpeg
松の木の中には倒れるものも有り電線によりかかって危険な状態が続いた.

その後,引越しのどさくさで僕が大切にしていた雑誌,漫画の類は総て
廃棄されてしまい,10年,20年と月日が経過するうちに通常の図書館で
この雑誌を見ることは不可能となって今に到っている.と,ここまで書いて
終わりにしたらいかにも尻切れトンボであるが,1987年に少年小説体系
のシリーズが三一書房より復刻されたことを報告しなくてはならない.
その第五巻が高垣眸,急いで購入すると「凍る地球」のタイトルを見出す
ことが出来た.次回この物語の驚くべき内容について触れてみたい.
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エア

SFは昔好きで早川書房買いあさりましたが
確かに環境問題は記憶にありませんが
星真一氏はテーマにあげていました。
当時それを読んだ後外に出、妙に優しさを感じました。
(辛い選択ですが)
by エア (2010-03-28 12:26) 

symplexus

>エアさん
 星新一のショートは恐いお話が多いですね.
僕が環境問題の古いSFで思い出すのは
 安部公房の「第四間氷期」です.
  背景設定は海面上昇による汎世界的水没ですが,
 その原因は太陽黒点でも温室効果ガスでもなく
  地質学的変動というものでした.
 それに主題はこうした環境変化そのものではなく,
  予測された未来が未来であるかぎり,
  それが天国であろうと地獄であろうと残酷なものであるという
 形而上的な問題提起でした.

 ”凍る地球”は文字通り危機としての未来を
正面から問題にしているのですが,
 具体的な問題が生じてからそれを後つけで
  SF化したのではないところに鋭さがあります.
   次回のUPでこの辺りを考察してみようと思います.
by symplexus (2010-03-28 21:19) 

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