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孤独な海の惑星 [絵画制作と絵画論]

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地球が日常の会話にまで登場するようになったのはいつ頃からであろうか.
最近では小学生までが「これって地球に優しいんだよね~」とか言う時代である.
地球とか世界とか,一昔前には誇大妄想と言われかねない言葉が,
グローバル化,インターネットの登場,環境問題の深刻化等につれて,
宿題のテーマの中にまで使われる時と成った.しかし,改めて考えてみると
地球という用語が世界地図とリンクしたのはそれほど昔のことだろうかという
疑問が生じてくる.

●ギリシャ時代にはすでに球体としての大地(erde)の概念は
生まれていたとの証拠がいくつか有るが,それでは足元の裏側にどのような
”世界”が存在するのかという点になると,現実の探査はもとより想像力の翼
も及ばなかったように見える.
 悪名高いコロンブスのアメリカ”発見”ではあるが,
コロンブス一行の到着は確かに球体に配置された陸と海のいたるところに
人間の生活があることを証明してみせた.こうなれば裏も表も無い筈なのに
価値観はそのままにして,なおも吸い寄せられるように裏側の”極東”やアフリカ
の宝を求めて船団を繰り出したのが大航海時代である.球体の到達点には征服
言語の痕跡が刻まれ,地図としての”世界”と物理的実在としての”地球”が
統合されていった.近世から近代に至ってもこの強権国家の拡張意欲は
衰えなかったのだから,今日いうところの統合システムとしての地球の
概念など生まれようがなかったのだ.

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●Earthの意味が現実的活動の場としての土地を意味するだけでなく,
そこに生きる生物共通の資産を意味すること,そのことなしには人類の
生存すら危ういという実感が生まれたのはもしかして前世紀末,1990年代
になってからではないだろうか.
 アポロ宇宙船の船体から世界に発信された地球の映像はその予言的な映像
として多くの人に衝撃を与えた.しかしその映像の意味するものの深遠を理解する
ためには,それから20年の歳月と新しい時代;情報化社会の到来を必要とした
ということであろう.さらに言及するなら意味の深遠は深い宇宙空間に広がり,
一層深い謎を投げかけているかに見えることである.

●高度知性誕生の場としての惑星;地球

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 我々が住む地球は太陽系に属し,その太陽系はアンドロメダ型銀河の
片隅に位置している.天文学が明らかにしてきたこれらの情報を今の
我々は平凡な知識として何の感動も無く受け入れているが,16世紀の
イタリアで平凡な星;太陽を主張したジョルダノ・ブルーノは火炙りの業火の
のなかで焼き殺されている.このブルーノの系譜はそれから300年を経て
一つの端的な定式化を獲得した.『宇宙の特別の存在ではない人類』という
カール・セーガンの定式である.しかし,本当に特別な存在ではないのだろうか.
生物が一旦進化を開始すれば必然的に知的生物の創出に至るということは
生物学者の合意というわけでない.知性の誕生はきわめてまれな偶然的
事件であるとすれば,生命の誕生が無数の星で起こったとしても,我々の孤独
は解消されないのだ.僕にはこの正否を判断するだけの深い見識は持ち合わせて
いないが,1992年10月12日に始まったSETI(Search for Extraterrestial Intelligence;
地球外知的生物探査)活動から聞こえてくる情報が予断を許さないものである
ことは確かなように見える.もちろんSETIを支えている世界中のサポータの
驚くべき努力を知らないわけではないし,またSETIの発足にいたるまでの幾多の
パイオニアの努力,執念,創意,哲学には本当に驚かされる.例えば宇宙からの
電波信号を実際に捕らえようとした『オズマ計画』は実に1960年という政治抗争
のさ中に実行に移されたことなどその一例である.

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●solitariaを受け入れた後の虚無
 地球をちょうど生物の分類のように名称をつけたらどうなるのか考えたことがある.
2命名法による最後のところは肝心なところで,端的にその本質を規定しなくては
ならない.僕の個人的な見解では水が最も重要な特性だと思っているが,これは
液体としてのaquaの存在だけでは不十分で海のような水の巨大プールの存在を
示す必要がある.つまり海の惑星;Oceaniplanetaということになろうか.ラテン語の
辞書で確認していないので間違っているかもしれないが, Planetaへの接続型はi
であるとすると海のOceanusの語尾はOceaniとなる.問題は第2項目で,現状を
受け入れて完全に孤立した惑星;solitariaとしてみた.
    Oceaniplaneta solitaria
これが僕のつけた地球の名称である.とここまで書いてものすごく悲しい想いに
襲われた.どう表現したらよいのだろうか.広大な宇宙の暗黒をあてもなく旅する
旅人,その先には希望も無ければ目的も無い虚無の世界が広がっている.

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絵は最近旧作を上から完全に塗りつぶして描いた新作である.一週間ほどで
描いたが解説はもうしない.大作ではないが画集に載せる予定である.
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エア

円形が原生生物のようであり
卵子ののようにも見えます。
宇宙のはて、さらに進むと
別宇宙があるのではと夢想してます。
(宇宙はある方向に引き寄せられてると)
・・・親宇宙を子供宇宙が回転し衝突しまた宇宙が生まれる。。。想像だけは膨らみます^^
by エア (2009-07-15 01:51) 

symplexus

エアさん,いろいろなこと考えているんですね!
 面白い!!
科学という論理の限界を科学が明らかにした今,
 存在というものとどう向き合うのか・・
  解答は無いかもしれないし,
 有っても一つではないとすれば
 正統を争う時代では無いでしょう.
  僕も身近なものに
   永遠を感じたいと思っています.
by symplexus (2009-07-15 09:38) 

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