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●冬の蝶 [生命]

水滴Dec409.jpeg

11月とは思えないような小春日和が一転,12月の最初の週の中日
3日木曜日には冷た氷雨がぱらついていた.しかし翌4日には青空が
戻りまたもや穏やかな陽射しである.それでも,工房の窓から
見る松林の下はぽっかりと洞窟のように暗く,落葉を落としてやせ細った
コナラ林の先には,もはや命の気配というものがぴくりとも動こうとしない.

      ”冬か・・・”

天空に目をやると薄い雲が絶え間なく形を変え,冷えた大気の中に
ちぎれては消えて行く.ひたすら微動だにせず弱い陽光を吸って緩慢な
死の道行きをうごめいていたカマキリ達の姿もいつのまにか消えてしまった.
多くの生き物ははや安息の時を迎えたのだろうか.

コナラDec409.jpeg

  風に舞う落葉は,無数の木々が冬を乗り切るため
   自から身体の一部を切り捨てる自殺装置だ.
葉の付根では大量の死が一時に生産され
 用済みの枯葉は容赦なく切り捨てられていく.
合理的と言えば聞こえは良いが自然は非情なのだ.

コナラ林Dec409.jpeg

その時何かがひらひらと舞踊るのが見えた.
”トンボ・・・いや確か蝶のような・・”
あわてて目をこらすと青い筋状の紋が目に飛び込んできた.
ルリタテハだ!脅かさないようそっと近づいたが,
2,3度旋回してその優雅な姿はあっというまに森に消えてしまった.

ルリタテハ1.jpeg
盛夏のコナラの樹液を求めて集まったルリタテハとカナブン

思いがけず目にした美しい冬の蝶,
それは多様な蝶の越冬形態を知らなければ
 どこかあるべき時と場所から浮きあがった存在として
無知が持つ独特の冷笑を浴びたかもしれない.
場違いとか,季節外れとか・・・・
大多数の人間にとって,大多数の価値観や傾向からはずれること,
 それは何であれ,許しがたい逸脱行為なのだ.
人間にひきつけて言えばもっと激しく不快な表現となるのだろう.
老残をさらすこと,そこに多くの安堵と憐憫のよりどころが有るとか.

朽木Dec409.jpeg
 
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サチ

綺麗な蝶ですね^^
このブルーの色、すごく好きです。
by サチ (2009-12-10 16:16) 

symplexus

>サチさん
 瑠璃色のルリを名前に使う動植物は結構あるみたいです.
  ルリシジミとか,ルリビタキとか・・・
瑠璃色が連想させる何か夢のような雰囲気が好まれるのかも.
 群青色が類似色と言われているのですが,
  ルリタテハのそれはかなり明るい青に見えました.
   行方を見失ったのですが成虫で越冬するので
  静かにしておいた方が良いのでしょうね.
   落葉の下かどこかで春までお休みするのでしょう.
by symplexus (2009-12-10 20:29) 

cjlewis

この季節に、こんな鮮やかな蝶がいるんですね。
by cjlewis (2009-12-12 11:44) 

symplexus

>cjlewisさん
 オオムラサキとかはかなり早くから
森の中で見かけなくなりました.
 調べると越冬が幼虫タイプです.
  それに対してルリタテハは
 成虫でも越冬することを今回確認できました.
 この違いが何を意味するのか分からないのですが・・.
  越冬出来ると言ってももう12月ですから,
 たまたま暖かさに誘われて飛び回ってしまたのかもしれません.
by symplexus (2009-12-12 11:58) 

moo

ルリタテハに目が釘付けになりました^^
国蝶オオムラサキは栗山町のファーブルの森で観察できるようです。
by moo (2009-12-12 19:27) 

symplexus

>mooさん
 オオムラサキもこの工房では夏の常連客です.
この蝶が羽根を広げると,周辺の美しさを総て吸収して
 辺りに音もなく放射するかのようです.
  しかし,見かけより戦闘的な蝶で
   オオスズメバチと張り合いながら樹液をむさぼる様は
  高度の飛翔力と相まって迫力ですよ.
 生き物が消えて静寂の森のようなことを上に書きましたが,
 キジもキツネも活動期で,木々の冬芽を見れば
  春は大騒ぎになるでしょう.
by symplexus (2009-12-12 21:18) 

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